寒い時には、燗酒で
寒くなった。12月になったのだから当然だろうが、コート一枚羽織る季節になると寒さも身に染みてくる。
そんな夜、軽く一杯やって家に戻ると、この冷え切ってしまった体を温める酒が全くなかった。日本酒があれば、「一つ燗でもつけてみっか。ツマミは鼻でもつまんで」なんて思ったのだが、何もない。
仕方ないので、焼酎でもお湯割りに、何ぞと思って焼酎の入った箱を手に取るが、「入ってないじゃん」と悲鳴の雄叫びとなった。
「さて、どうする、ゴーする」冗談を言っている場合ではない。取り敢えずお湯を沸かそう。「そうだ、濃いめのレモンサワーがあるじゃないか」それをお湯で割ったらどうだ。
これは失敗。まるで甘いクエン酸飲んでるようだ。いかん、こりゃいかん。
横で見ていた相方が「赤ワインあるんじゃない。ホットワインにしたら」まさに無責任なる発言。
「昨日のカレーで全部使ったよ」
「全部入れちゃったの。馬鹿だね~」
「ほんじゃ、ミニボトルのウイスキーあったでしょ」
「それ、おととい飲んじまった」
「馬鹿だね~、あんたは」
と、全く意味のない会話を繰り返しながら相方は横で日本酒を飲んでいる。実は、この日本酒、相方の知人から貰った酒なので我輩の口には入らない。
「その酒、少し分けてくれよ。燗にして飲まないかい」
この投げかけには虚しい返答が返るだけ「ダメ!」
ハハハッと笑いながらクエン酸を流し込んだが、やはり酸っぱいだけで旨くはない。
「梅酒でも飲んだら」
そうだ、梅酒があった。台所の棚の奥から引きずり出した梅酒の瓶。「お~輝いて見えるぜ」トクトクと注げば琥珀色の梅酒がグラスの中で踊りだす。湯で割れば、体も温まる。
「梅酒、うめ~しゅ!」
寒いときはこれもオツなものだ。燗酒付けた気持ちで「もう一杯」。
横で見ている相方。猪口を傾けながら「じゃあ一杯だけあげるよ」と注いでくれた日本酒の味。やはり、こっちのほうが「うめえぜ」。
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