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鷺沼「弥太郎」

  

暑い。

夏なのだから、暑いのは当然だが、梅雨明けから時も経っていないので、体が追い付かない。体の水分が取られるので、喉が渇く。仕方がないので、店でビールを飲む、飲むと体が熱くなる、熱くなればより暑い。何だか、暑さのスパイラルに落ち込んだようだ。

そんな環境だからこそ一杯目のビールは実に旨い。キューッと流し込んだ時の感動は一日の疲れを一気に癒してくれる。疲れていなくても癒される。理由のいかんに関係なく夏のビールは旨い。

そこで、今日は田園都市線「鷺沼駅」まで足を延ばした。なぜこの駅なのか、たいして理由はない。「酒が旨い」と耳にしたので、つい下車してしまった。

そして向かった先は「弥太郎 鷺沼店」。鷺沼駅より徒歩2分程度の近場にある。見つけたと思いきや2階が店、急な階段を昇らなければならない「帰りは要注意だな」と頭に叩き込む。

席数は50席ほどあるのだろうか、カウンターとテーブルに分かれている。ゆったりとした気分でまずは生ビール。続けて日本酒を注文するが、この店、酒の管理がいいので旨味の引き出された日本酒を味わえる。

たまに酒の銘柄とは裏腹に実に不味い酒が出される時がある。そんな店には二度と足を運ばない。しかし、「弥太郎」この店はいいぞ。若い女性従業員に「この店の酒はいいね」と声を掛ける。「ハイ」と笑顔で返事。ますます旨く感じる。

そこで、平目の刺身を注文した。これがまた実に旨い。添えられたエンガワがコリコリとした脂身をだして、白身魚の醍醐味を口いっぱいに広げてくれる。そこに冷たい日本酒が流し込まれる。至福の一杯だ。

刺身と酒が旨い店はこれだけで合格点。そこに笑顔の女性店員、「いいぞ~」と下卑た事を考えたが、これも夏の暑さで頭の回転が故障したせいかもしれない。

下世話な話はしたくないので、これで店は退散とした。

下り階段を「危ない、危ない」と叫びながら降りたが、ふらつく程飲まなければ何の心配もいらない。

ただ、この日は2軒目の梯子酒であった。少々酔っていたことは確かだった。

そして3軒目に向かうのだが、その話はまた素面の時に語るとしよう。


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