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タランチュラ出没

 

十五夜も過ぎ静かな夜を送るためには、最適な季節となった。
窓を開ければ、そよ吹く風に燗付けした酒も違和感なく注ぐことが出来る。昨夜も雨降りながらも、心地よい夜であった。

しかし、しかしである。突然我が家のベランダから進入して来たのはタランチュラではないかと叫びたくなるほど大きな蜘蛛が入って来たのである。

芥川龍之介は「蜘蛛の糸」で、泥棒の善行を一本のクモの糸を伝うその姿で表したが、そんなスカした事は言ってられない。
手の平ほどの大きなクモがスススッと入って来たのである。

この頃、こんな大きなクモは見たこともない。マダラの色がついていれば、まさに毒蜘蛛タランチュラである。

色は茶色で毒々しさは無いのであるが、大きく広げた足の長さと、どれが手で、どれが足だか分からないその姿は、何とも不気味である。

慌てて靴べらで追い払おうと思ったが、逃げ足が早いこと。それに進む方向が定かでない。「ハッ」と油断したすきに高級サイドボードの裏に入った。

「逃げるか卑怯者!尋常に勝負、勝負」叫ぶ声虚しくも、細い隙間に入ったタランチュラもどき。こうなれば科学的薬物攻撃法で対抗。ゴキブリ退治のスプレーを壁の隙間に流し込むこと3回。
「シュー、シュー、シュー」テレビの音も耳に入らず、テーブルにあった「野菜たっぷり焼きそば」を台所に片付け、菊正宗「嘉宝蔵」を撤収した上での戦闘態勢である。

初めて知ったのであるが、ゴキブリは動くとき「カサカサ」と分かるのであるが、タランチュラもどきは、動く音が全く聞こえない。

その時突然である。サイドボードの裏に隠れていたとばかり思っていたタランチュラ。ななな何と、私の背中の壁から飛びかかって来ようとしているではないか。

「何と卑怯なタランチュラ。背後から襲うとは武士の風上にも置けない」敵は毒蜘蛛タランチュラもどき、当方も負けてはいられない。
右手にゴキブリ撃退スプレー、左手には靴べらと、まさに関ヶ原の合戦。

「タランチュラ家康、我が領地に無断で入るとは何事か、義を持って闘い挑む」シューっとスプレー攻撃。逃げる速さは目にも止まらぬ勢い。
もう一発「シュー」まさに灰神楽のごとく広がる霧の中を逃げるはタランチュラ。これでもかと闘い挑み、ベランダに追い込むまでの死闘30分…。

闘い済んで芳醇なる酒、菊正宗「嘉宝蔵」を口に含み靴べらにプウーッと吹きかけ、その闘いに賞賛の美を飾ったのであった。


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