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白川郷「どぶろく祭り」

  

大雨の中、どぶろく祭りが開かれた。

緑溢れる山間の中、合掌造りの白川郷が現れる。家々には歴史を支え、今後も続く趣きがある。

この10月、白川郷の五つの地区では、豊作の秋を喜び、家内安全と平和の祈りを込めて祭りが開かれる。それが「どぶろく祭り」である。

午前9時から始まった祭りは、五色旗を掲げた行列が合掌集落の民家を練り歩き、笛や太鼓を響かせ行列が続く。そんな行事の中メインのどぶろくが振舞われる前に勇壮な獅子舞が披露された。

舞い手が四人入る獅子舞は「むかで獅子」と呼ばれ、巧みな舞で観客を魅了する。その演舞のお披露目の後、どぶろくが振舞われる。あくまでも神事とは言いながらも「早く飲みてえ」と不謹慎な脳みそが喉の渇きを訴える。

さあ、お披露目だ。割烹着のおかみさんが「きったて」と呼ばれるお酌用の容器にどぶろくを入れて、来客へと注ぎ入れる。ところで、会場での若者の言葉に目を回した。「どぶろくって何だい」とそんな言葉が耳に届いた。

「なに、どぶろくを知らないのかい」と呆れていると、その友人も何とも曖昧な会話で、どぶろく談義で話が続いていた。

さて、このどぶろくだが。よく勘違いしている人がいるが、濁っている酒もどぶろくだと思っている者がいる。これは大きな間違いなので、耳をかっぽじって聞いてもらいたい。

どぶろくはお米、米麹、水を発酵させて、醪(もろみ)をこさずにどろどろしている状態の酒をどぶろくと言う。つまり酒を濾過する作業が行われていない状況を「どぶろく」と言う。酒税法では「雑酒」というカテゴリに分類される。

しかし、にごり酒はこしてあるので「清酒」として分類される。つまりどぶろくは米粒も入った粥のような酒なのである。これが実に旨い。香りも甘い蒸米の風味に多少ガス感も含まれている時もある。それだけ発酵が続いている訳だ。

その粥のようなどぶろくを盃に注ぎ、一杯が二杯に、そして三杯と途切れる事もなく飲み続けられる。多少酸味も含まれた味は、何杯飲んでも飽きる事はない。ツマミが欲しいと普通は思うものだが、どぶろくには必要ない。

会場に溢れる芳醇な香りは、祭りの感動を持続させている。会場に溢れる客たちも帰ることなく盃を傾けている。

そんな間に、雨が止んだ。遠く山間の空に浮かび上がる青空は火照る頬に反射して顔の赤味を増幅させている。

「実に、いい祭りだった」。


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