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秋田 歓楽街「川反(かわばた)」

  

1年半前、秋田への旅を続けていた。本来旅をする時は、あまり予定をたてない。勿論電車の時間や宿泊先は決めているが、どこで観光するのか、そんな事はその場所の勢いで決めている。

旅と言うのはあまり予定など考えるものではない。その当地で風の向くまま気の向くように、足を運べば自然と面白い所へ運んでくれるものだ。細かく行先やスケジュールを考えるのは旅行であって決して旅ではない。

と、普段思っているのだが、この秋田の旅だけは失敗した。

秋田の川反を知らなかったのだ。確かに昼間、街中を散策している時に大きな「秋田川反飲食店街」の大看板を見かけるには見たのだが「こんな場所に飲食店があるんだ」そんな程度であまり関心も持たずに通り過ぎてしまった。これは大きな間違いであった。

少なからず地元の歓楽街だけは事前に調べておくべきだったと反省している。

実は、先日NHKの新日本風土記で「川反(かわばた)」が再放送されていた。まさに秋田の雪の酒場街である。そこには明治から昭和にかけ、川反を彩った川反芸者がいまでも続いている。それだけではない、100年近く営業しているおでん屋では店主が一人で継ぎ足しのおでん汁に旨味を閉じ込めている。カウンターだけの小さな店には凛とした緊張感が漂う。その訳は店主の寡黙さに加えて所作の美しさが客に言葉でなく動作で歓待している。
燗酒は自分の掌で燗の上りを確かめる。その指先の仕草が実に美しい。

テレビの画面が変われば酒蔵に行きつく。木桶の酒樽が並ぶそこは「新政」である。酒造りの原点を極めるのは佐藤祐輔杜氏である。若作りの顔からは杜氏らしさは感じられない。しかし語る日本酒へのこだわりは胸に響き入る。秋田県産の米だけにこだわり、酵母は6号酵母、純米酒だけを限定とし、醸造用乳酸を使わず、生もと系酒母だけで醸す。そのこだわりが酒マニアから絶大なる信頼を勝ち取っている。

その新政の名前が川反の入り口に電光看板として彩を添えている。その昔には8000軒もの飲食店が軒を並べていたと言うのだが、残念ながらその面影も過去の名残となっている。その大きな原因にコロナ禍の深夜営業お断りの数年がある。

それでも、店の中から聞こえてくる酒飲みの笑い声に安堵感を覚える。

秋田「川反」今度は必ず、この街に行ってみたい。新年の抱負である。


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