酒蔵について
かつては酒蔵に女性が入るのが禁止されていた時代がある。女人禁制である。
一時、相撲の土俵で救命活動する女性に「降りて」とアナウンスした日本相撲協会の対応が物議を醸したこともあったが、酒の世界も酒蔵の中に女性が入れないという慣習があった。
今でも、その慣習を引きずっている蔵もあるらしいが、それも次第になくなるのではないかと思っている。
なぜ突然こんなことを書くかと言えば、女性杜氏が素晴らしい酒を醸している。信州上田の酒蔵、岡崎酒造。信州亀齢は実に香り豊かな、きれいな酒だ。しかも女性杜氏が美しい。
この女性があの味を出すのか、と感じ入れば優しい味わいに合点がいく。北国街道沿いに岡崎酒造はあるが、酒を置いている売店も綺麗に造られ、立ち寄った者を飽きさせない。
コロナ禍の中、一度訪ねて見たが売店の中で食べたソフトクリームが旨かった。酒でなく「ソフト」かい?と思われるが、これが結構おいしい!
他にも女性杜氏の素晴らしい酒は数々存在する。
栃木県佐野市相澤酒造の女性杜氏相澤晶子さん。相澤酒造の次女として生まれた相澤さん。全く別の職業に就いていたが、父親が亡くなったのをきっかけに実家に戻り、蔵に入った。
広島に百年以上続く今田酒造本店の今田美穂杜氏。麹を振る姿は、何とも美しく愛おしい。その彼女らの世界を追い続けた映画が『カンパイ!日本酒に恋した女たち』で紹介されている。
あげればきりがないが、女性杜氏の味は優しく繊細に感じられる。もう、女性が入れない蔵は考え直した方がいいのかもしれない。
そもそも、日本酒は米と水を発酵させて造り上げる芸術品だ。酵母と麹菌が発酵の手助けをするが、ただの米と水がアルコールと炭酸ガスに変化する、それは神がかった醸造技術の化学反応だ。
感じ入ってもらえただろうか。
あの重たい米を運び、真冬の寒さの中で冷たい水に手を赤め、昼夜問わずに発酵の変化に神経を研ぎ澄ます。そんな過酷な環境に飛び込む女性たちにエールを贈ることが美しき日本酒の発展につながるのではないだろうか。
頑張れ女性杜氏。日本酒の未来があなた達にかかっている。
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