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雪で止まる生活に、ガスまで止まった。

  

都心にも大雪が舞い降りてきた。

街並みを歩いてみると、車はスリップを避けるためにゆっくりした運転となり、歩行者も数少なく、歩く者も転倒を気遣ってゆっくりとした歩行になる。商店街も店は早終いとなって何だか街全体が止まったような感覚に陥ってしまう。

しかし、止まったのは街だけではなかった。我家のガスも止まったのである。

数日前、突然家のベルが鳴った。しかも人が訪ねて来る時間では無く宅配便が届く予定もなかった。「朝早くから申し訳ありません。ガスの検針の者なのですが」扉を開けてみるとガス会社の検針の女性が立っていた。

「あの~、何か」如何にも済まなさそうに「お宅では長い時間ガスを点け続ける事ってありますか。」との質問に当方も回答に窮してしまった。

どうもガス漏れがあるらしい。ガスメーターが点滅をして、その原因が長時間の使用か、ガスが漏れているのか判断が困難な様子。急遽ガス会社に連絡する羽目となった。何人もの担当者が家の中や配管周りを検査し始め、結果としてガス漏れがあるらしい事が判明したのである。

さて、これからが大変だ。漏れた個所が分からないのである。すぐには直らないと言われれば、「そうですか」と言葉を返すしか方法が見つからない。しかも、直すまでガスの元栓は閉めると言うではないか。

当然ではあるが、ガスでの料理は出来ず、風呂も入れない。水道をひねっても冷たい水しか流れてこない。卓上コンロを引っ張り出して、薬缶で湯を沸かし、歯磨きは冷たい水ですすぐしか策がない。ただ、風呂に入れないのは困惑してしまった。

そんな事はどうでもよく。数日後にはガス会社や工務店の人々が飛び込んできた。風呂釜を外し、部屋の配管に沿って家具を動かし、あたかも引っ越しでもするのかと思われる有様であった。

こんな時、何の役にも立たないのが事務系で仕事をしている家主一人。ソファーに座って一部始終を目で追うばかり、テレビを点けてみようかと思ったりしたが、横で働いている人に何だか申し訳なく、ポツンとパソコンを叩きながら働いている振りをするのが関の山であった。

しかし、働いている彼らは実に立派であった。我家のトイレも使わず、飲み物すら飲むこともなく、ただ黙々と作業を続けるのである。朝9時過ぎから始まって夕方5時近くまで、吹き晒しの外で配管を付け替え、風呂場に入った彼は冷たいタイルに座りながら作業を続けている。

作業が全て終わった後も、彼らが悪い訳では無いのに「ご迷惑お掛けしました」と深々と頭を下げて帰って行った。

雪道から自宅に戻れば、水道からは暖かなお湯が流れてくる。風呂場で蛇口をひねれば湯気の立った熱々のお湯がなみなみと溢れ出す。このぬくもりも彼らの作業のお陰かと思うと、湯気の陰から外の雪景色を眺め続けてしまった。

こんな寒い日も、彼らは黙々と作業を続けているのだろう。何も言わず、自分の仕事を全うしているのだろう。大きな体で背中を丸めて配管を変えている姿は、私よりはるかに人の役にたつ人間だと心から思ってみたりした。

「雪よ降り続いてくれ。交通も足並みも少し不便だと思うことが、生活への当たり前の生き方を見つめ直す機会を、雪の重さが与えてくれたのだろう」少し自分の生き方を変える必要があるのかもしれない。


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