映画 土を喰らう十二ヵ月
「日本映画はいいな~」
季節の音が映像の中で木霊(こだま)する。小鳥の鳴き声、樹木の囁き、水脈の響き。自然と言う幻術の中に美しい音が響き渡ってくる。
そして、まさに土を喰う空間が冒頭から映し出される。
信州の山奥で暮らすツトムを訪ねる恋人の真知子。囲炉裏の前で燗酒を酌み交わす。網の上で焼かれる、里芋。「熱い!」と頬張りながら口に運ぶ姿は滑稽にも映る。そして燗酒が映像に花を添えている。
「土の香りがする」語られる言葉は、自然と共に歩む本来の食の原点を静かに伝えている。
家の前の小さな畑で野菜を収穫し、種撒く横から山鳩が種をついばみに来る。それを追い払う二人の姿。山に入れば、キノコや山菜を集め、それを沢の水で洗い流す。
そんな当たり前の生活を四季の移ろいと共に映像化されている。
こんな綺麗な日本の映像は、外国映画では観れない日本映画の真髄ではないだろうか。
勿論、映像だけではなく。会話の楽しさも味わってもらいたい。松たか子演じる真知子の合いの手「あいよ!」と返答を返すやり取りも、いいリズムで伝わってくる。
決して派手さはないが劇場で観る映画の良さを眞に伝えている感がある。自宅のテレビでは感じられない映画館の醍醐味を是非味わってもらいたい。
そんな気持ちを胸に抱えながら、昨夜は柚子味噌を作った。味噌に砂糖、味醂を加え丁寧になじませる。柚子の皮をすりおろし、柚子の果汁を搾って加えると出来上がり。
簡単な料理だが、これもまた土を喰らう楽しみではないだろうか。どうぞ、酒のアテにもいけると思うが、いかがだろうか。
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