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若者よ、大志を抱け。

  

まだ若かりし頃、大塚のとある宴会場で8人の若武者は酒を酌み交わしていた。

一体どれくらい飲めるのか。バカバカしい疑問を8人の馬鹿武者は気にかけ始めていた。

では、と一人の馬鹿野郎が会場の隅に1合徳利を並べ始めていた。一本が二本そして三本、十本から二十本はあっという間に並び出し、とめどもない量が地を這うように並び始めた。徳利を下げようと動き始めた若旦那に「ちょと待ってくんねい。」「これこれ、しかじか」とギネス挑戦でもしかねない心意気で「徳利は下げないでくんねい」と懇願するのであった。

さらに重ねる事、50本から記録を伸ばし100本到達の時はファンファーレを鳴らし鐘や太鼓の連打が始まる。店の若旦那は揉み手をしながら「どんどん運べ」と従業員総出で燗付けを始める。

しかし、限界は必ず来るものである。130本に到達したその時、まだ健全な馬鹿が、「おい諸君、君らは金があるのかい」と実に不謹慎な質問を投げかけてきたのである。

今まで赤ら顔で飲んでいた連中が一気に青く顔色が変わり始めていた。酒を飲んでいる時に「金あるか」と「貴方のこと嫌い」この二言にめっぽう弱い連中は、そそくさと財布の中身を見るふりをして隣の野郎の懐具合を勘定し始めた。

それと頃合いを見計らった若旦那から、「あの~、そろそろ店の徳利の在庫が空になってきましたので、どうか並んだ徳利を下げさせてもらいたいのですが」と馬鹿武者の懐具合を読みだしたのか、宴席中止のお達しが出始めていた。

しかし、壮観であった。

130本がずら~っと、壁伝いに並んでいるのである。まるでオブジェの芸術品か、はたまた植込みの垣根のごとく綺麗に並んでいるのであるから爽快感丸出しである。

ちなみに130本を8人で換算すると一人16本程度となる。1合徳利を8勺と計算しても約12本。つまり一人が1升2合飲んだのだからほんまもんの馬鹿である。

ところで金勘定だが、何とか財布の底までひっくり返して支払いは済んだが、何食わぬ顔で全員が無事帰宅したのだから、昔は酒豪が多かったことを記憶している。

忘れちゃいけないのが、その中の一人が私であることは言うまでもないことであ~る。


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