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保養所もしくは監獄?

  

京都の街は、観光客で一杯だった。人と人が重なり合って、紅葉を見ながらスマホのシャッターを押しても必ず人の頭が映りこむ。よくよく考えれば自分もその一人であるから仕方はないが、赤いモミジの下で薄くなった小生の頭を写しやがれと、後ろの輩にほくそ笑んでやった。

何故こんな紅葉真っただ中の京都や奈良の街に潜入したかと言えば、春日大社の奉納コンサートからご招待を受けた。と言うと「凄い~!」と驚かれるだろうが、参加者が多い場合は抽選になるとの内容。こちらは当然のごとく参加を前提に新幹線を取り、ホテルの予約も済ませた。

ところがどっこい、見事に抽選は落選となった。こりゃエライことだ。小野リサ様のボサノバを「林檎の庭」と言われる粋な名の会場で聞くつもりで準備にいそしんでいたが、カ~ンとハズレの鐘が鳴り響いた。

さらに事件は現場で起きた。ホテルで失敗した。一泊目の奈良では何とかホテルが取れたが、二日目に選んだ京都市内のホテルはどこも満室。そりゃ、何万円もする豪華なホテルなら取れただろうが、小生数千円で泊まれなければ自分のポリシーが許さない。

パソコン叩きながら、ついに見つけた横文字ホテル。こりゃ安いぞ、しかも個室だから安心して眠れる。よくあるじゃないか、二段ベッドでバックパッカーの若者が、ただ寝るだけという何と表現すればいいのか、そんなんじゃ、流石に困る。

友人なんぞは、その手のホテルに泊まって、雨に濡れたジーパンを盗まれるという怪事件に出会っている。そこで、ここなら大丈夫だろうと予約のボタンをポッチッと押してしまった。

ホテルに到着。入るのに映画館のチケット発券機みたいな機械で住所などを打ち込むのだが、これが要領を得ない。後ろには泊り客が待っている。汗を掻きかき入力が終わればカードが出てきて手続き終了。しかも宿泊の皆さん、そのカードをケースに入れて首から下げている。

「まるで役所の職員だろう。」一言伝えるが高齢者が見当たらない。しかし、そのカードケースも後から納得する、エレベーターに乗るのも、トイレに入るのも、シャワーを浴びるのも、このカードが必要になる。

そして部屋の中はさらに素晴らしい。一瞬入って驚いた。フロントと繋ぐ電話もない、テレビもない、ゴミ箱も置かれてない、トイレも無ければ風呂場もない。風呂場がないから洗面所もない。ある物書いた方が理解しやすいだろう。あるのは畳まれた布団、そして円卓の小さな卓袱台だけ。それが四角い部屋に置かれている。

凄いぞ、これは珍しい。初めての経験、はっと思いだした。地域の自治体が経営している山の中の保養所の部屋が、これに近いものがあった。そして思い出すのが、刑務所の独房。しかし保養所にはテレビがあったし、ホールには卓球台もあった。監獄部屋には三畳一間だが、トイレもあれば小さな洗面台もあった。すると、このホテルそれより凄い。

決して悪口を書いている訳ではない。新しいし、綺麗だし、部屋には何もないがシャワールームも共同である。トイレだって部屋から出る事にはなるが、何度だって使い放題である。

ただ、くれぐれも聞いてもらいたい。小生が愛用している東横インより宿泊費が高いときている。当然であるが、東横インは満室だったので、この横文字ホテルになったのだが、なかなか愉快なホテルであった。

いいですか、皆さんがカードケースを首から下げているのは、もしもこれを無しで部屋から出れば、トイレにも入れない、エレベーターにも乗れない。ましてシャワールームの入り口でストップだ。

であるから小生、夜中にオシッコで起きた時も部屋から閉じ込められないよう、寝るときも、カードケースを首から下げて一晩過ごした。

案の定、夜中に首を絞められる夢を見たのは、現実の悪夢であった。


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