東京くねくね
たまには笑って読みたい本、そんな本を探してみたくはならないだろうか。
松尾 貴史氏が実に愉快な本を書き上げた。その名も「東京くねくね」東京の町並みをくねくね歩いてしまおうと言う、何とも気負いのない作品となっている。
千代田区から始まって、東京都の最東端、江戸川区まで話は及ぶ。しかし、ここで終わらず武蔵野市そして町田市、さらには川越市や横須賀市と東京以外にもくねくねと歩き続けるのである。
だが、歩くと言っても、有名店に入って蘊蓄を傾ける訳ではなく自由が丘でたなびく洗濯物を「鯉のぼり」と見間違い、品川区の「日本ペイント」前で「加トちゃんぺ!」をして記念撮影をして見るという、何とも真面目なのかいい加減なのか、判断しかねる流れが、東京をくねくねといじり回すという所だろうか。
しかし、カレーの店はそれなりに参考になる食レポが楽しめるのでカレー好きな方には為になるのではないだろうか。それもそのはず松尾氏本人が下北沢で「゚般若(ぱんにゃ)」という店を経営している。であるからして街々に行けばカレー店に入りたくなる、これ人情であろう。
さて、そうなるとカレー好きでない人にこの本は不必要かと言えば、そこは雑学あれこれと、飲み屋に立ち寄る定番が待っているので安心して読み進められるという訳である。
まあ、兎にも角にも気軽に読んでもらえれば、「ほ~、町並みって面白いな」と共感してもらえると思う。
そして唯一いい言葉とおぼしき文章「知らない角を一つ曲がると、それはもう旅の始まりです」との言葉、いい表現じゃないか。ただ、この言葉は生前、永六輔氏が語ったようである。
松尾氏の言葉でないのが残念だが、くねくねと歩いて角を曲がって、電信柱に抱き着きながら東京を散策するのも粋ってもんじゃないだろうか。
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