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旅の思い出「七本槍」

 

ゴールデンウイークは、足を滋賀まで延ばすことになった。

「旅は道ずれ世は情け」いつものゴールデンコンビ4人組は、仕事の疲れも感じず、日頃の情けを引きずり新幹線に飛び乗ったと思っていただきたい。勿論、指定席など取れるはずもなく、廊下に座って股関節をなぜながらと思っていたが、あにはからんや、席は確保、旅立ちには良好なるスタートをきる事になった。

そして向かった先は、忘れてはならない蔵元探索であろう。

この時期蔵元では、軒先にかかった杉玉の色が、濃紺の緑から、赤みを帯びて茶色に変わり出す。蔵の仕事も一息ついて休眠の時間となる。田んぼには、苗が植わり、秋の実りが来るまで酒蔵は酵母菌とともに、まさに静かな時が流れるのである。

その蔵に足を踏み入れたのが、滋賀県木之本町「七本槍」でお馴染みの冨田酒造。

開け放たれた、蔵の入り口に並べられた酒の数々。今年搾られた生酒は、何とも可憐な姿で酒好きな客に笑みを浮かべている。

この蔵で忘れることの出来ないのが入り口に掲げられた「七本鎗」の筆跡。かの有名な北大路魯山人が書かれた文字が、頭上からその思いを語るのである。

大正2、3年頃。まだ福田大観と名乗っていた若き北大路魯山人。長浜の紙文具商、河路豊吉にその才能を見込まれ長浜をはじめ湖北地域に逗留していた。その時、冨田酒造12代八郎とも交流があり、「七本鎗」「酒猶兵」の作品を残したのだから、いたまらない。

筆跡に時代と人のふれ合いが感じられ、その思いが酒造りにも反映されるのだろう。今年の生酒は優しさに包まれた、温かみを感じさせてくれる味である。

「試飲いいですか」と声を掛けると「どんなお酒が?」と若き女性の反応が反射的に返ってきた。

「今年の生酒はどうですか」と、注ぐ指先を見つめながら小さなグラスに澄んだ雫が流れ込む。この一瞬が大好きである。

唇から、鼻に、そして舌の奥から喉越しまで、踊るように酒が輪を描く。旨みと酸味、それだけではない何かが、この蔵とともに味わえる。それが試飲の醍醐味だと言いたい。

腹に入った、酒の余韻は空腹への呼び水となった。

木之本駅前の福田屋を訪ねるとした。この店は冨田酒造から聞き込んだ、隠れ家的店である。ただ、店の雰囲気は大衆的なおばちゃんとおじちゃんの店だが、文章だけの戯言と受け止めてもらいたい。さて、注文する料理は「鍋焼きうどん」これは「美味い」。歯ごたえのある「かしわ」の旨みがスープに馴染んで是非味わってもらいたい。所で、「かしわ」と鶏肉を表現する言い方は関西だけのようだが、あえて「かしわ」と書かせてもらった。

腹も満腹。帰り際に、「おばちゃん、店の写真とらせて」と外から声をかけると「あらまあ」とおばちゃんまで顔をのぞかせた。

「あの~、店だけの写真を…。」と言えずにおばちゃんも一緒にシャッターを切ったのは、男の優しさだろうか。

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