青森県三浦酒造「豊盃つるし酒」
本の虫Tさん紹介の1冊。
徳川夢声ってご存知ですか。年配の方なら「宮本武蔵」「西遊記」など、ラジオの前で、聞き入った覚えがあるでしょう。私は録音で聞いてます。
話術が巧みで、対談もピカ一でした。その対談集から、一部紹介しましょう。
鳥井:むかしはアルコールに水割って色つけたもんでも、ウイスキーとして通ったんですからな。いまでも、ブドウもなんにも入っていないブドウ酒が許可されてる。大蔵省は、税金さえとれりゃいいんですからな(笑)
夢声:トタン製のタンクへアルコールをいれて、色素と香料をいれて、ガラガラッとひっかきまわしたのをビンに詰めて、ブドウ酒という名をつける。こういうのがあったそうですね、むかしは。
鳥井:いまでも、そんなんがあるんですよ。(笑)
夢声:ブドウっ気のないブドウ酒も、人によってはよろこばれるんです。「あの悪酔いの気もちがよろしい」てんでね(笑)悪い酒ばかり飲んでる人にいい酒を飲ませると、ものたりないっていいますよ。「悪酔いもなんにもしないじゃないか」って怒っている(笑)
中略
鳥井:わたしんとこは、もともとウイスキー屋ではなく、ブドウ酒屋なんですよ。赤玉ポートワインがそのころよう売れましてね。どっちかといえば、もうかっていたんですな。
夢声:どっちかといえば、ね。(笑)
鳥井:その赤玉ポートワインがかせいでくれる金をぶちこんで、ウイスキーをやってみようとしたんですから。ほんとうは私がこさえたもんではない。赤玉の需要者、販売者がつくったもんです。
夢声:いまはどこの場末の酒屋にもお宅のウイスキーがあるようになりましたが、大変な生産高でしょうね。
鳥井:税金だけでも、年に三十億ですからな。
夢声:月に二億五千万円。
鳥井:そらあえらいですよ。飲む人が払うんだから、ええようなもんですけどね。(笑)1本について、七百円ぐらい税金とられてるんですな。
夢声:三十億といえば、予算のうちでもちょっとした項目ですね。政府としては、お宅もいいお得意さんですな。
鳥井:大蔵省、ちょっともよろこんできまへんがな。(笑)
本日はここまで、鳥井という方は鳥井信次郎さん、サントリーの創業者です。
当時朝日新聞に掲載されていたようですが、「問答無用Ⅲ 政財界編」として、図書館にて探されると、詳しくご覧になれます。ちなみに神田古書店でも徳川夢声さんの書籍はあまり出回っていないのが現状のようです。
現代、こんな対談を紙面にのせたら、企業コンプライアンス云々と、広報が訂正を迫ってきそうな、内容です。この対談は昭和28年1月27日に行われたものです。
戦後8年のんびりしてました。
しかし現代は美味い酒が揃ってます。
青森県三浦酒造「豊盃つるし酒」昨年青森県の鑑評会で吟醸部門最優秀賞を受賞。
ひと昔まえは、この手の酒は一般流通しなかったんですが、我々でも味わう事が出来るようになりました。720ml 5576円は高いのですが、夢声さんのこぼれ話を肴に新春の贅沢です。
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