森の風
一枚のレースのカーテンを購入した。
真っ白な彩が、窓から流れ込む日差しを優しく覆いつくしてくれる。
外の景色も変わった気がする。たった一枚の変化が、家の中のコーディネートに華燭を加えてくれた。
町田駅から一足延ばした街道沿いに「森の風」と銘打ったカーテン専門店が目に留まった。
その店名に心引かれて覗いた先には、静かな空間が待ち構えていた。
正直に言えば、オーダーで注文するカーテンの購入は初めての経験である。
丈の長さは、レールの寸法は…。「1軒の幅で」そんな答えが気恥ずかしく感じてしまった。
しかも、仕上げに数日かかると言う。
考えてみれば、自分の洋服もオーダーでなど注文した事もない者が、と思ってはみたものの…。
しかし、仕上がった品物を広げたとき、窓際に広がる純白の映像は金額では計り知れない美しさがあった。
休みの今日は、窓越しの景色を眺めながら、ワイングラスに秋田県天寿酒造の「鳥海山」を注いでみた。
ほんのりとオリが絡んだ生酒は、瑞々しい新酒の味わいを届けてくれる。
喉に注ぐ心地よさに花を添えたのは、万両の実をついばみに訪れた小鳥の囀りだ。
少し窓を開けて、その姿を覗いてみる。冷たい北風がカーテンの裾を悪戯している。
ベランダで踊る小鳥の横で、森の風がワルツのリズムを奏でている姿が、そこにはあった。
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