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きんぴか

  

ネタが尽きた。とうとうこの日が来た。作家でもない者がこんな事を書くのはおこがましいが、何を書くべきか悩みに悩んだ。

そんな時は、本棚の中からヒントを得ようと、一冊の書物を取り出した。それが、いけなかった。読み始めた一冊にはまり込んでしまったのである。

私の尊敬する浅田次郎先生の「きんぴか」である。読まれたことの無い人にはネタバレになるので、あえてここで話の流れは語らないが、13年間務めた刑務所から出所する場面から物語は始まる。

それだけ言えば分かると思うが、何と言っても「長編悪漢小説」なので、堅気の者には出くわさない別世界の話、実にためになる話と理解している。

別世界の話という訳ではないが、私も人にはあまり話せないような仕事をしていた時があった。いや、別に悪い世界にいた訳ではないが、あまり褒められるような仕事ではないので、そんな表現をしてみた。

債権回収の仕事である。

勘違いしないでもらいたいが、怖い顔した兄さんが、脅しながら金を取りたてる、そんな回収ではない。あくまでも、法にのっとり冷静に優しく「お金支払ってください」と語るだけである。

ただ、世の中とは渡りづらい、優しく言っても「ですよね~。支払わなくちゃ駄目ですよね~」とはいかない。「無い袖は振れねえんだよ」と開き直られた時にゃ「分かったわかった。ただ私もね子どもの使いじゃないんでね」となる訳だ。

当時まだ、30歳前後の若造が家電販売の不良債権回収業務であるとは言え、中々言葉に出来ない経験も踏ませてもらった。

ある時、美しき女性にネグリジェ姿で玄関先に立たれた時には四苦八苦した。尋ねた先はマンションの一室、芸能人かと思うほどの美貌であったが、「どうぞ中で話しましょうよ」なんて言われ靴でも脱ごうものなら、奥から出てきた強面の方にまる裸にされる。いわゆる「美人局(つつもたせ)」だ。

勿論、そんな策にはまるほど素人ではない。

とっても怖い暴力関係者の事務所で支払いを済ませてもらった時は、生きている心地がしなかった。しかし、きっぷうのいいお姉さんは全額びた一文まけることなく支払ってくれた。やはり筋の通った人にはそれなりの接し方があるものだと学ばせてもらった。

まあ、こんな話を書けば山ほどネタは生まれるが、あまり語れない内容なので、今日は「きんぴか」の続きを読むことにする。

人生の経験で言えば、私も浅田先生のような生き方をしていた時期もあった。人生とは実に面白いものである。


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