小田 和正「こんど、君と」
そのハイトーンボイスは今でも健在であった。
11月8日、横浜アリーナで開かれた小田和正のコンサートに今年も参戦することができた。喜びである。
75歳といえば高齢という言葉で済まされない、後期高齢者。それでも、あの声はどこから出るのだろうか。
自分と比較するのもおこがましいが、私よりはるか年上にもかかわらず、あの音楽に向き合う姿勢は尊敬以外の何物でもない。CDの音源と生の声で、こんなにも変わらない歌い手はそうこういないのではないだろうか。
かつてオフコース時代に初めて小田さんの声を聴いたとき、女性の声かと耳を疑ったくらい、美しい音色だった。澄んだ声と天使のような声質は天性なのだろうか。それとも努力の結晶なのか。
何十年も小田さんの声と共に歩んできたが、益々その声に魅了されていく。
しかも不思議なのが普段の語り口調は決して高い声ではない、少しかすれた声で話すのだが、歌いだすとあの声に気持ちはすっ飛んでしまう。どこから出るんだ、その声は。
横浜アリーナ13,000人の聴衆の前で「風を待って」そう、あの明治安田生命の写真と共に流れる曲からスタートが切られた。180メートルの花道は観客と少しでも近い位置で語り歌うその姿を見せたい思いだろう。
かつては、客席の横まで階段を昇りながら、時としてマイクを客に向けながら歌い続けた時期もあった。勿論、コロナ禍の中でそれは無理な願いだろうが、その思いは聴衆の全てに伝わったと思う。
2時間半、25曲を歌いきっても、あの天を突く声は一つも変わることはなかった。
来年の追加公演も決まったとピアノの前に座りながら報告された。多く語るでもなく、かすれたあの声で、小さく謙虚な言葉で聴衆に語られた。鳴りやまぬ拍手の前で一人弾くピアノのメロディーが流れだす。
何だか、あの姿を見ていると走馬灯のように過去の自分と重なる気がする。そして決心する。小田さんが歌う限り、この場に足を運ぼうと…。
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