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新宿荒木町 タキギヤ

 

191001

書くべきか、書かざるべきか。「月の明かり」の中で‏披露する事が良しと思えない店と出会う事がある。つまり「教えたくない」のだ。

もしも、つまらん客がこの店の雰囲気を壊すことでもされるものなら、居てもたってもいられなくなる。それだけ大切にしたい店がこの「タキギヤ」なのである。「なら書くなよ」と言われそうなのだが、勿体ぶって書いてしまった。何とも言い訳がましい出だしから始まるが、そんな理由があるものだから、あまり細かくは書かない、兎に角いい店だ。

その新宿荒木町。路地の隅々にかつて賑わった花街の面影が色濃く残っている。店の一軒一軒が、親しみのある暖かな色合いが溶け込んでいる。

さて、縄のれんをくぐってみるとしよう。カウンターと小上りが3卓。一番奥の小上りに体を埋めたが、畳と体が合う店にはあまり行ってないなと、日頃の飲み方を顧みてしまう。

まずは、ビールで喉を湿らす。その隙におまかせの小鉢がいくつか並び出した。遠くカウンターを望み見れば、マスターが忙しく立ち動く。常連客が次から次へと来店し、開店と同時にほぼ満席状態。予約を取っていて良かった。

日本酒は神亀のぬる燗から始めるとした。独特な神亀の香りが口一杯に広がる。岩海苔わさびを舐めながら送り込む酒の旨さは、生きている事に感動を覚える。

食の合い間合い間に小鉢が並ぶ。キンピラに王祿を掛けてみた。島根の郷土感を想像してもらいたい。しめ鯖と綿屋はどうだろうか。〆た酢は日本酒を誘い水のように流し込む。

語りながら、笑いながら時は流れていく。「タキギヤ」この店の雰囲気は客がいいのか、店がいいのか。若者が大声で下卑た話で盛り上がるような場所では決してない。そこが堪らなく好きな場所だ。

そうこうしながら時は過ぎ、店を後にする。荒木町の街並みに灯が輝き出している。かつての女たちの哀歌が聞こえて来るのは飲みすぎたせいもあるのだろうか。

月の明かりが酔った足元に、薄っすらと影を落としていた。

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