活魚いけす料理「柳憲」
全国各地、その所でなければ味わえない料理や酒。だからこそ足を運び、その地の旨みを堪能する。そんな味探しの旅は四国、高知に飛んだ。
活魚いけす料理「柳憲」。高知市はりまや橋より徒歩1分。この店、突然見つけて暖簾を潜った訳ではない。地元の知人にご同行願って入ったのだが、店の構えは高級料亭、料理は豪勢に大皿盛、これぞ土佐だと言わんばかりの大迫力で料理が並ぶ。
最初に並んだのが伊勢海老と刺身の盛り合わせ。海老の髭は、客の箸先を払いのけるように動き続けている。遠慮することなくその身を頬張ると、甘味が口の中で広がり続ける。ぐいっと飲んだ酒は酔鯨、土佐の荒波が喉の奥で飛沫を上げる感動ものだ。
続いては、カツオのたたき。分厚く切られたカツオの切り身、藁で炙った皮目が七色に輝く。「まず、塩で食べてもらいたい」と言われ、粗塩を一つまみ。振りかけて口に運べば、東京で食べるカツオの味覚がすっ飛んでしまう。「旨い」。
タレなどかけずに塩が、ご当地の食べ方だそうだ。白身の刺身も天ぷらも、焼き鳥でさえも塩は大人の料理だ。
実はこの料理に目を丸くして感動する間に、しこたま酒を煽った。そこでさらに目から鱗の一言をいただいた。「高知の者は、酒の銘柄に御託を並べるようなことはしない。日本酒を飲めることだけで嬉しいのだ」この言葉、後頭部をピシャリと叩かれた思いがした。
そうなのだ、銘柄も、削り具合も、酒米も四の五の言っている場合じゃないんだ。旨けりゃいいんだよ。と…。
そんな明言を耳にしながら、仕上げの寿司で腹は満腹。
はりまや橋を千鳥足で歩きながら、高知の夜は深けるのであった。
「高知、旨いぜよ!」
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