神楽坂で出会いのひと時(九頭龍蕎麦)
駅の改札口を出て、通りに立つと、どこからかアコースティックの音色が囁きかけてきた。
神楽坂。その名にふさわしい時間と空間が、音楽と調和している。東京の、しかも早稲田からほど近い場所に、こんな大人の場所が混在しているとは想像にも描き出せなかった。
道から一本それて、石畳の道筋をたどれば粋な姉さんが「ちゃいと」と声を掛けられても不思議はない。そんな神楽坂は、忘れていた「いにしえ」の街を再現してくれている。
歩くつま先が、自然と暖簾の入り口を捜し求めて、行き着く先は一軒の蕎麦屋。入り口に「目移りしてください。福井の銘酒三十種類」軒先に歩幅を絡ませていた。
店の名は「九頭龍蕎麦」。和風でもなく、とは言え洋風な煌びやかさは無い。
テーブルから注文する言葉は、福井の加藤吉平商店「梵」を90ccのグラスで挨拶とした。そう、この店、酒は全て福井県で統一している。つまみも「へしこ、豆腐の味噌漬け、小鯛の笹漬け、 越前汐うに」と福井の名産が揃い踏みとなっている。
勿論、「一本義」「花垣」「黒龍」「早瀬浦」等々と福井の銘柄が並びに並ぶ。その数30種類。
料理にも手の込んだ痕跡。サラダ一つとっても、華麗な盛り付けには唸らしめるはからいがある。
そして酒であるが、梵の「艶」は、心を躍らせた。その言葉の通り華やかな香りと幅のある味は色艶のごとく魅了されてもう一杯と手が出てしまう。
何杯飲んだだろうか、一通りの酔い加減にはマネージャーの話芸の巧みさも見逃せない。その薀蓄は、並みの知識ではないだろう。話の飛び交いも、酒の肴となる。
時の流れに沿って、ざる蕎麦を仕上げにもらった。田舎そばの喉越しに、本わさびで鼻先をくすぐる味わいは格別な至福である。
粋な時間は、神楽坂にあり。そして「九頭龍蕎麦」で、ちょっと粋な大人の時間を楽しんでもらいたい。
神楽坂かぁ~
街並みも素敵ですよね。着物が似合う街・・・当然 日本酒ですね。 お昼は 蕎麦 にしよう!梵はないけど(^^;)