焼いた酒粕、絡める砂糖
江戸時代、酒粕は非常に大切な役割を担っていたそうであります。
粕漬けの魚の切り身などは、焼いて食べると最高に美味しいものであります。酒粕汁だなんてのも、身体を温めてくれる冬の料理にはもってこいです。
しかし、その名は「粕」であります。まさに、残り物のような印象を与えます。
確かに、お酒を絞った後の残り粕だと言われればそれまででしょうが、それは、あまりにも可愛そうな言葉です。
冒頭に書いた江戸時代には「手握り酒」。まだ、十分にアルコール分があるし、液体ではなく固体なので、このように呼んだそうです。
それ以外にも、「酒骨」。魚も三枚に下ろせば、中身が残る。酒でも絞って残った所は、骨だ。と、まことに粋な名前を付けたものです。
そんな「手握り酒」にサバを漬け込んで焼き上げると最高。と語るのは農学博士の小泉武夫氏。著書「食あれば楽あり」の中に書かれています。
「脂肪がぐんと乗り出したサバの切り身を酒粕に漬け込んで、その漬け上がり具合を確かめて焼き上げ、熱々のヤツを飯のおかずに食する」
七転八倒するほど、旨いそうであります。
想像しただけでも、「美味しい」と叫びたくなりますね。
それほど、酒粕の効用は大きいものです。
ただ私は、もっと簡単に酒粕「酒骨」を食するのです。
子どもの頃、ストーブの上で、酒粕を焼いて、ほんのり焼き目がついた頃に、砂糖を酒粕に絡めて食べるのです。
まるで、ピザパイのチーズを砂糖にした感じです。
これが、子ども心に最高の喜びを与えてくれたのです。小学校の低学年の頃でした。
ただ、これが段々美味しさを追求するあまり、酒粕に沢山お酒が染み込んだ酒粕を買ってきて、レアー状態で食するようになったのです。
小学校の高学年でしょうか。口の中で、酒の味が浸みだし、まさに通の食し方でした。
それが、さらに発展すると粕ではなく、酒そのものを最高の食べ物として食することになるのです。
酒粕の究極の食べ方は、粕と分かれた酒を食するのが一番ではないかと…。
そう結論付けたのは、幾つの頃だったのでしょうか。
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