上野のガード下で「珍々軒」
上野駅前を歩くと、人の波が押し寄せて来る。右から左から人の流れにアタフタしながら店の風流さにため息が出る。「昭和だ」。
そんな雑踏の中で本日目指すのはラーメン店。「わざわざ上野まで行く必要があるの」と疑問視する声も聞こえてきそうだが、それは行ってから考えよう。実は、ここに来る前、神田の古本市を歩いていた。マニアックな本が並ぶ中、ここぞと見つけた一冊が何と12,000円の金額、流石に手が出なかった。
そんな前座で、歩き疲れての上野アメ横商店街。有るわ、有るわ飲み屋の数、約400件はあると言われるその中で、見つけたるは「珍々軒」。店の軒先に並ぶテーブルにはラーメン吸い込む輩が、実に幸せそうな笑顔で箸を動かしている。
よし俺も席に就こうかと見渡せば、ちょいと横には数名の席待ちが睨み返して来る。「そりゃ、そうだな」と納得して列の最後尾に並び始める。
注文する内容を見ながら、大半の客はラーメンにチャーハン。この「珍々軒」は「湯麺(タンメン)」と「チャーハン」だそうだ。しかしここで二品食べると胃袋が詰まってしまう。並ぶこと20分、注文は、普通のラーメンに餃子、そしてビールで気道確保。栓を抜かれた中瓶ビールにグラスをかぶせて運ばれる。これも「昭和だ」。
そして肉汁こぼれる餃子に箸が行く、流し込むビールの味、「珍々軒」最高。創業70年以上、現在三代目が営む老舗ならではのラーメンが運ばれてきた。
ガード下は電車の音がBGMとして鳴り響く。その音楽にすすり込むラーメンの音、芸術だ。
何とも、昔の面影が味にも染みる。醤油味が我々高齢者には優しく感じられる。追加は紹興酒グラスで。
おっと、一升瓶でそのまま注ぐ紹興酒。勢い余って溢れるのではないかと思ったが、そこはプロ。ピタッと止まってグラスに静止。ラーメン汁に紹興酒、絶妙な旨さだ。腹も膨らんで周りを見れば、どこの店も軒先にテーブルを広げ、店内より、外が賑わっている。まさにフランス街の喫茶店のようだ。
品がいい飲み方とは言えないが、なぜか心が癒される。こんな飲み方が出来るのも戦後の闇市で培った上野アメ横商店街である。
いい味にであった。
珍々軒
住所 東京都台東区上野6-12-2
営業時間 火〜金曜10:00~22:00、日曜10:00~20:00
定休日 月曜(祝日の場合は翌日)


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