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夢は枯野をかけ廻る

  

さて、さてである。前回雪の壁を見に立山黒部アルペンルートに行ったと書いたが、実は本来の旅の目的は観光ではなく、出来るなら別荘を購入したい、そんな思いが含まれていた。

何て贅沢な奴だ、と思われるがそれが結構安値で売り物件が出ている。二棟もあって300万円とか、信じられない金額で売りに出ている「一つ見てみるか」そんな気になるのも無理のない事だと思わないだろうか。

行先は安曇野。実に聞こえもいいじゃないか。北アルプスを望みながら、ベランダ越しに小鳥のさえずりを耳にし、時として飛び出してきたリスに声を掛けてみる。

そんな限りない妄想を抱きながら不動産屋の案内で内見となった。しかし、妄想と現実はかけ離れるものである。

しかし、しかしである。

不動産屋に返答する前に、突然訳の分からないことが勃発した。

そもそも何故、別荘などと他愛もない思いに至ったかと言えば、この4月で職場を退職することになっていた。定年退職という奴だ。所が突然その話がご和算になってしまった。信じられない事だが、私の後任といて働いていたものが私をさておき先に退職してしまったのだ。

「何故、何故なんだ。」と嘆いてみたとて仕方がない、退職届と同時に出された病院からの診断書「業務を続けることは困難と思われる」なんて書かれれば、止める事もできず。「辞めるのは結構だが、そうなると私はどうなるの、私も辞めていい」と少々ごねてみたが、「大人気ない奴だ」と一笑に付されながら引き続き頑張ってくれと切ない声で肩に手をかけられた。

「それはないだろう。私はですね最後の余生を別荘に住んで…。」そんな声には耳を貸そうとは誰もしなかった。

はかない、まだこれから働き続けなければならないのか。「あ~、不動産屋に買います。なんて言わなくて本当に良かった」と安堵したものの、これから先幾つまで働くのか大きな溜息がゲップと共に放出された。

まさに芭蕉が読んだ「夢は枯野をかけ廻る」である。

ただ、この旅行で宿泊した先が貸別荘であった。そこが「風林の宿」、心地よい施設で、別荘を購入して貸別荘もいいものだと思うほどのいい環境だった。天然温泉付きで、仲間といろりを囲んでひとときを過ごすそんな時間もいいものだと思う。

世知辛いこの世の中、自然の中で過ごすのも悪くない。

しかし「サルが出るそうだ」。そんな事を知人に話したら「馬鹿だね~。サルどころかイノシシや熊が出るよ」だそうだ。


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