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蔵元の旅・長野県諏訪「舞姫酒造」に思いを馳せて

  

日本酒がこんなに美味しいと感じたのは、一本の日本酒との出逢いからだった。

出逢った日本酒は今まで見たことも、聞いたこともない銘柄の日本酒だった。その名こそ「舞姫酒造」翠露との最初の出逢いであった。

一升瓶の封を切ったと同時に広がる吟醸香に「なんじゃこりゃ」と驚いただけで、事は終わらなかった。口に含めば、その甘味と酸味の広がりに「うわ~」と叫んでしまった。

美味しいだけではない、あまりにも美しすぎる味だったのだ。

酒の肴など、全くいらなかった。

テーブルの上で封を切ったと同時に、まさに立ち飲み状態で「翠露」の味覚に翻弄させられたのだ。

それまでは、「酒は辛口だよ」と叫びながら、生酒も、生もとも何も分からず、ただ酒が好きなだけの飲み方だった。

しかし、その時から人生は変わったのだ。「翠露」の味わいを求めて、西へ東へ酒の旨さを求め歩いて、現在にたどり着くのである。

私にとって、「舞姫酒造」翠露との出逢いは、日本酒への果てしない旅の一歩を踏み出した、そのスタートだった。

その蔵元に、とうとう足を運ぶことが出来たのである。

「感動」という二文字が、私の身体から宙に浮いたほど、蔵の入り口に立った時、嬉しさが込み上げてきた。

その時、たった一人だったら涙ぐんだかもしれない…。

小さな、小さな蔵の入り口だった。でも、それが堪らなくいじらしく、謙虚に思えて、私はこの蔵が「好き」である。

扉をくぐれば、冷蔵庫の中に、「翠露」と「舞姫」がすまなさそうに並んでいた。

突然の来訪に蔵の奥から出てきた兄ちゃんは、いかにも蔵人風の人の良さそうな若者だった。

試飲に出したくれた味覚は、やはり丁寧な味だった。蔵の心意気がそのまま心に染み入る味わいとして伝わってくる。

大事に、大事に搾られて風味が飲み手に喜びを味合わせてくれる。

この蔵が、民事再生法の申請がされたとは、今でも信じられない。

兄ちゃんに一言声をかけてみた。「どう、大丈夫?」

胸を張って「大丈夫です」と返って来た言葉に、重みがあった。この言葉ある限り、「舞姫酒造」は健在だと心に刻んだのである。

諏訪湖の周辺には、数ある蔵が沢山ある。

しかし、しかし私は「舞姫酒造」が一番好きである。

守りたい、どうしても守りたい蔵である。


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