旅先の珍事件
全国旅行支援たる割引制度を活用して奄美大島に向かった。そんな支援制度の関係もあって、奄美のホテルは満室状態。そりゃ、格安なのだから仕方ないだろうが、それにしても満室とは驚きである。
ところで先日、京都での宿泊先を「監獄部屋か?」と少々きつめの表現で書いてしまったが、重ねて言うが、決して悪口を書いている訳ではない。旅先での面白さを少しでも楽しんでもらいたく表現したまでである。であるからして、「ハハハッ」と笑って受け止めてくれれば結構である。
では、奄美の宿泊先某ホテルから始めるとする。
まず、部屋が和室。それはいいのだが、多分この部屋従業員の宿泊場所ではないだろうか。勿論、我輩の想像で書いているので、「多分」である。
部屋の冷蔵庫がとにかくデカい。「一体何入れるんじゃい」と叫びたくなる家庭用の冷蔵庫がど~んと置かれている。その横には長テーブルが鎮座してテーブルの上にはタオルや歯磨き、風呂グッズが置かれている。いかにも今日の為に準備したとしか言いようがない。
当然だろうが、部屋の中にはトイレも風呂もない。探索の為にオートロックも効かない扉を閉めてトイレに向かう。和式のトイレである。ここ数年和式トイレなど使ったこともない。ノスタルジックな昭和を思いださせる。
「いい感じじゃないか」ただ用をたすのに太ももが疲れるので、使用する気持ちにはならない。
もう一つ書いておこうか。奄美大島の12月、南国の冬は暖かなぬくもりの里では、と勝手に想像したが、どうした事かすこぶる寒い。ダウンコートを着て来たが、それでも寒い。部屋の中はもっと寒い。
「エアコンで温めようじゃないか」スイッチが入ると温かい風が届くかと思いきや、温かなホコリが舞い降りてきた。さらに温度を30度まで上げたが全然暖まる気配がない。
「どうなっちょるんだ、この部屋は」買ってきた黒糖焼酎を流し込んで体の芯から温める作戦を取ったが全然酔う気になれない。仕方なく横になったが、布団は煎餅布団。「体痛い」嘆く間もなくホコリ舞う部屋でマスクを着けての就寝となった。
翌朝目が覚めると、昨夜の深酒がきいたのか、便意をもようした。しかし、部屋の外のトイレは和式であることは記した通りだ。
「そうだ、大浴場の階に洋式トイレがあったはず」少々内股になりながら、洋式トイレに直行した。あった。飛び込むなり便座に座り込んだ。「冷たい!」なんと便座のスイッチが入っていないのだ。冷たい便座に心臓飛び出そうになった。
「なんで、スイッチ切れているの」嘆いている隙に大きな排出物は快楽の中流れに任せて旅立ってゆく。電源を入れれば、便座も心地いい。それでは可愛いお尻のマークを押せば、心地よいシャワーが小さな祠をくすぐるのである。
さて頃合いを見て、止まれのマークを押してみた。しかしシャワーの噴水が止まる傾向がまったくない。「あれ?止まらないぞ」「なに、止まらない」えええっ、どうすればいいのだ。このまま立ち上げれば噴水が天井まで届いてしまう。
どうすればいいのだ。全くの密室の中で、立ち上がる事もできず、まさかここから叫ぶわけにもいかず、「どうしよう」最後の決断は電源を切ることにした。
そうか。前に入った奴もシュワーが止まらず電源を切ったのか、便座が冷たいのはそのためか。
合点がいった時、前に入った奴と何故か信頼関係が生まれる気持ちが心の底から湧いてきた。しかし、次に入る奴も「冷てェ」と叫ぶに違いない。トイレの横で次に入る奴をしばらく待っていが、あまりにバカバカしいので部屋に戻るとした。
もう一度書くが、決してホテルの悪口を書いている訳ではない。珍事件を報告したまでである。
それでも、奄美大島は大好きなのであ~る。
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