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カフネ

  

カフネ。
ほのかに体温をおびた前髪に指をとおし、やさしく、胸を満たす想いを込めて梳く(すく)。

その言葉を読んだだけで、この作品の繊細さが心に落ちて来る。全国の書店員が「一番に売りたい本」として本屋大賞一位受賞した作品に相応しい。

「カフネ」

当初、この作品を耳にした時、書店を回っても在庫切れとして手に入らなかった。それだけ売れていた証なのだろう。確かに本の末尾には初版から7ヵ月足らずの間に7刷も刷り増しされている。まさに重版出来である。

手に入ったのは「こんな場所に」と思う書店で、一冊だけ残っていた本を購入した。帰りの電車でワクワクしながらページをめくった記憶が今でも思い出される。

テレビやネットニュースで作者の阿部曉子氏を目にとめた方も多いと思うが、私にとっては初めての出会いであった。「何ていい作品を書く作家だろうか」と本を閉じるのを躊躇したくらいだ。

本好きな書店員が「この本は多くの人に読んでもらいたい」その願いは私の願いでもある。今、全国の書店が店を閉めている。実に残念なことだ。

私の周りでも本を読まないと言う人も多く存在する。「3分経つと眠くなる」と公言する人も少なくはない。しかし、3分でいいから本を読んでもらいたい。3分あれば書物に溶け込むことが出来るはずだから。

ページをめくる、その微かな紙のすれる音色を聞きながら活字の流れに身を任せてごらんなさい。生きている実感と幸せを共有できると思うのだが、いかがだろうか。

そんな時「カフネ」は、あなたに必ず寄り添ってくれるはずだと信じている。

初めての出会いが、人生を変えるかもしれない。それが「本」であればいいなと、私は願っている。


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