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セイジ・オザワ 松本フェスティバル《夏の夜の夢》全3幕

  

演奏の終了と同時に会場が揺れた。万雷の拍手が怒涛のごとく会場を埋め尽くした。

セイジ・オザワ 松本フェスティバル《夏の夜の夢》全3幕、指揮は沖澤のどか氏(OMF首席客演指揮者)そのタクトから流れる曲の美しさ、包み込む指揮の流れに心が揺れ動く。

指揮者の沖澤のどか氏は24年8月より松本フェスティバルの史上初めての首席客演指揮者に就任している。19年ブザンソン国際指揮者コンクールで優勝し、同時にオーケストラ賞および聴衆賞も受賞。18年東京国際音楽コンクール〈指揮〉第1位という華々しい経歴を持つ彼女の指揮を、どうしてもこの目に留めておきたかった。

開演と同時にタクトが振り下ろされるとコントラバスの低音がホールの底面を揺るがす。舞台は夏の夜の幻影が星の輝きの中から妖精の歌声へと流れてゆく。

残念ながら、オペラの演奏のため指揮者の姿は舞台の下に隠れ、あまり観る事ができない。それでも3幕目になると舞台上の鏡の反映が指揮者の姿を正面から映し出すシーンがわずかに望まれた。

固唾を呑んで、その姿を食い入るように見つめ続ける。「美しい」実に綺麗なタクトの流れ、その先から音の絹が全ての演奏者に届き渡るようだ。

舞台上で奏でる歌声に、演奏するオーボエの幻想的な音に歌声のハーモニーが重なる。観客は歌声に魅了されてゆく。

若干の休憩があるにしても3時間もの長丁場を見事な指揮で客の心をつかんでゆく。夢見心地にさせた演奏は3幕の終わりと共に割れんばかりの拍手に変わった。

カーテンコールの拍手は「ブラボー」とかかる声とスタンディングオベーションで会場が一体となる。繰り返すカーテンコール、拍手の波、「ブラボー」と重なる歓声。

開演前に提供されたワインの酔いは完全に醒め、演奏の酔いに形を変えていた。

実に実に素晴らしい競演であった。シェイクスピアの《夏の夜の夢》は松本の夜に花開かせてくれた。その立役者は沖澤のどか氏だろう。小柄な彼女の指揮に心動かされた私は松本駅前の繁華街でどぶろくとの乾杯で夏の夜の夢を奏で続ける事になる。


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